転職して完全在宅勤務になったとき、最初に悩んだのは通信環境でも机の配置でもなく、椅子のことでした。
前の会社ではオフィスに出勤していたので、自分で椅子を選んだことが一度もなかったのです。会社にある椅子をそのまま使うのが当たり前で、座り心地について深く考えたことがありませんでした。いざ自宅で仕事をするとなって初めて、自分の部屋にまともな作業用の椅子がないことに気づきました。あったのは学生時代から使っているパイプ椅子が1脚だけで、さすがにこれで毎日8時間は無理だと思いました。働き方が変わると、今まで気にしなかったものが急に必要になるのだということを、このときしみじみと実感しました。
最初に選んだのは、見た目がすっきりしていてそこそこの値段のチェアでした。レビューの評価も高く、届いたときはそこまで悪い印象もなかったのですが、2週間ほど経つと異変に気づきました。夕方になると腰の右側だけがじんわりと重くなってくるのです。最初は姿勢の問題かと思って意識的に背筋を伸ばすようにしていたのですが、それでも改善しない。どうも椅子の座面が自分の体型に合っておらず、座るたびに重心が左右どちらかに偏りやすい構造になっていたようでした。体の片側だけ疲れるというのはじわじわとしたものなので気づくのが遅れましたが、原因がわかったときはなるほどと思いました。椅子ひとつでこんなことが起きるとは、思っていませんでした。
返品して改めて選び直すことにしたのですが、このときから椅子の見方が変わりました。見た目や価格より先に、座面の奥行き調整ができるかどうか、背もたれのランバーサポートがどの位置にくるか、高さの調整幅が自分の体型に合っているかを確認するようになりました。ネットだけで判断するのが不安だったので、休日に実際に複数のモデルを試しに行きました。同じ価格帯でも座り心地は全然違っていて、やはり実際に座ってみないとわからないことが多いと改めて感じました。試しに座ったとき、腰が自然に収まる感覚があったものに決めました。
今の
オフィスチェアに替えてから、仕事中に体のことをほとんど意識しなくなりました。以前は1時間に一度は席を立って体をほぐす必要がありましたが、今はその回数が自然と減りました。集中が途切れるタイミングが減ったことで、午後の作業効率が体感として上がったように思います。椅子ひとつでここまで変わるとは、正直思っていませんでした。
椅子というのは、良い状態のときほど存在感がないものだと思います。体が楽だと椅子のことを意識しない。逆に合わない椅子を使っているときは、ずっと体のどこかが気になっている状態が続く。前の椅子のときはそれが当たり前になっていたのだと、今になって気づきました。在宅勤務を始めるにあたって環境整備を真剣に考える方は多いと思いますが、椅子だけは特に後回しにしないほうがいいと、自分の経験から強く思います。